2016年8月4日木曜日

ワニが出た!

夏、川遊びをしていて初めてオオサンショウウオに出会った時の印象がこれだった。サンショウウオという生き物が川に棲んでいて、噛まれたら指を食われてしまう、とは聞いていたがそれまで見たことは一度もなかった。田舎の小学生は川の指定場所で午後の二時間ほどを川遊びで過ごすが、その日も水に潜って岩の間を手で探りながら魚を捕っていた。するとぬるっとした大きな感触がある。川の主のような巨大な鯉か、それともオオナマズだろうか。いずれにしても普通にいる川魚とはまるで違う手触りだ。水面に上がって息を吸い直してから再び潜り、獲物を掴み出そうとそうっと腹の方を撫でながら、どこかひっかかりのある場所を探っている時だった。びくん!と獲物が体を一回わななかせ、突進するように穴から出てきて、股の下をくぐった。
見ると1メーター以上もある黒ぐろとした物体にはなんと手足もついている。ぶつぶつだらけの気色の悪いカラダに大きな頭。ワニだ。「ワニが出た!」と大きな声で叫ぶと小学生だらけの川は大騒ぎになった。年長の中学生やら大人やらが木の棒を手に集まってきて、浅瀬に追い込むようにしてその物体をついに捕らえた。生き物はなお抵抗し、捕り物に使われた棒に噛みついて暴れている。
「これがサンショウウオや。殺したらあかん。役所か消防に連絡せい」誰かがそう言って、大きなタライに生き物を押し込んだ。
「こんなんに噛まれたらえらいことになるぞ」そう聞いて、さっき下腹を手でさすっていた小学生は唇を紫色に染めて震えていたのでした。



                                    ありゃ化け物だでのう
0726 old woman

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