2016年12月13日火曜日

馴染み

「いらっ…おや、久しぶり」声をかけられて、男は少し照れくさそうにしながらカウンター席に腰を掛ける。「どうしてたのよ?変わりなかった?」店主の問いかけに曖昧な笑顔で答えながら、周囲をざっと見回した男は、半年前と何ら変わりない店内の様子に安心感を覚える。この半年、男の身に起きた変化は小さなものではなかった。比較的平穏だった日常に落とされた一滴、それがきっかけとなって小さな揺れが起き、その揺れが些細な変化を生み、それがまた意外に大きな波紋となって新たな動揺を生む。「広ちゃん、心配してたよ」店主の口からおんなの名前を聞いた時、男ははっとする。変化をもたらした最初の一滴・・・男はそれを今の今まで別のことに思っていたが、それは間違いかもしれない。広子という女にこの店で出会った三年前、変化はすでに始まっていたのかもしれない。(短編小説ふう。続かず)


1206 man

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