2016年7月12日火曜日

川端康成

川端康成には凝視癖があり、その印象をいろいろな人が書き残している。ある女性編集者が川端を訪ねた時、黙って30分近くこの凝視に会い、たまりかねて泣きだした。泥棒が布団の中にいる川端の凝視をくらって逃げ出した。孫ができた時も川端がじっと見つめると怖がって泣いた、など…
寡黙のひとでもあって、人といて、長い沈黙が流れてもまったく気にする様子はなかった。初見のとっつきにくさは超人的だったが、人の面倒見がよく、絶妙の間合いを保つ社交家でもあったことから、彼を慕う人が多く集まる場もあったらしい。

寡黙と凝視は初対面の人に強烈な印象を与える。いつからか、このふたつは失礼とされ、悪意や嫌悪、拒否のあらわれと見なされることも多い。通常、人といて、長い沈黙が許されるのは気を使う必要のない余程親しい関係に限られるし、対戦直前の格闘技のような強い視線を相手に投げかけることなどない。その代わりに人は沈黙を恐れてやたらとおしゃべりになり、目は一点に留まること無く動きまわる。寡黙も凝視も、特別なものになった。山にいると普通だが…



0630 YASUNARI KAWABATA

0 件のコメント:

コメントを投稿